われわれはヒトにおいて抗動脈硬化作用を持つと考えられている高比重リポ蛋白(HDL)粒子の代謝機構を研究し、ヒトの動脈硬化予防をはかるため、以下の研究をすすめた。先ず、ヒトHDL粒子の基本構造蛋白であるアポ蛋白AIの合成、分泌、そして体内動態を知るため、その遺伝子をトランスジェニックマウスに組み込み、アポ蛋白AIの合成メカニズムの解明にとりかかった。ヒトアポ蛋白AI遺伝子はすでに海外にて同定されているので、当該施設に書面にて協力を求め、そのDNAを取得した。現在、MTTプロモ-タ-にヒトアポ蛋白AIのDNAを融合させる段階である。この手技に成功すればマイクロインジェクションの手法を用いてヒトアポ蛋白遺伝子を本マウスに発現させ、ヒトアポ蛋白AIを合成分泌するマウスを作成する予定である。さらに本マウスのリポ蛋白組成を検索し、ヒトアポ蛋白AIが存在することを確認した後、そのHDL代謝について放射性アセテ-トとロイシンを本マウスに投与し、HDL粒子の生成と代謝を観察したい、生合成過程が明らかとなった時点で、次に本マウスにコレステロ-ル負荷を行い、そのコレステロ-ル処理能についての観察を行い、コレステロ-ル代謝におけるヒトアポ蛋白AIの役割を明らかにしたい。
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