研究概要 |
レニン・アンジオテンシン系は血圧、体液電解質のホメオスターシスに重要な役割を演じている。この系の律速酵素であるレニンは腎の傍糸球体細胞(JG細胞)で生成され、血中に分泌される。この研究は単離・培養したJG細胞を用いて、レニンの生成、分泌を遺伝子レベルから調べることを目的とする。(方法)JG細胞はラット腎を0.1%コラゲナーゼ処理後、フィルター法(100μm、25μmメッシュ)、percoll密度(1.04、1.06)遠心(1,000×g、30分)勾配法で得た。レニン生合成調節機序に関する研究はマーモゼットを用いた。レニン・アンジオテンシン系阻害剤であるレニン阻害剤(ES-1005、12mg/kg/時)またはアンジオテンシン変換酵素阻害剤(カプトプリル、0.53mg/kg/時)を2時間持続的に静脈内に投与(急性投与)した。さらに、ES-1005(48mg/kg/日)またはカプトプリル(2mg/kg/日)を浸透圧ミニポンプを用いて1週間腹腔内に持続投与(慢性投与)した。腎レニンmRNAの測定は腎組織よりグアニジン/セシウムクロリド法により速やかに総RNAを抽出した後、densitometric Northern blot法により行った。この時、プローブはヒトレニンCDNAのAvaII断片(957 6p)を用いた。(成績)電子顕微鏡的所見から約20%純度のJG細胞が単離された。ES-1005は急性、慢性投与したともに腎レニンmRNAを対照の1/3と有意に(P<0.05)減少させた。これに対して、カプトプリルは腎レニンmRNAに対して急性投与では有意な作用はみられなかったが、慢性投与では対照の6倍と著明に増加させる作用が認められた。(まとめ)腎レニン生合成に対して、レニン阻害剤は抑制的に作用し、アンジオテンシン変換酵素阻害剤は促進的に作用することが認められた。
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