左室起源の特発性心室性頻拍症の発症機序を検討する目的で、本症の4例(男性3名、女性1名)に電気生理学的検査を行った。穿刺法により少くとも3本の電極カテーテルを心腔内に進め、1本を右室心尖部に、1本を右室流出路に、1本を左室内に留置した。動脈圧、心電図モニターを行いつつ、右室心尖部より期外刺激を行い心室性頻拍症を誘発した。誘発された頻拍症のレートは平均155/分(150〜165/分)で心電図では右脚グロック左軸偏位型QRSを示し、自然発作時の心電図波形と同一であった。この頻拍症中に左室心内膜カテーテルマッピングを行い、最早期興奮部位を同定し電極カテーテルをこの部位に留置した。全例で最早期興奮部位は左室側壁心尖部寄りに位置していた。頻拍症中に頻拍のレートより5〜10拍/分速いレートで右室心尖部、右室流出路、左室最早期興奮部位より5〜10秒間ペーシングを行い突然停止した。頻拍症が停止しなかった場合は更にペーシングレートを増加し繰り返した。右室心尖部および左室最早期興奮部位よりのペーシングは、ペーシングを洞調律時に行った時のQRS波形および心室内興奮伝播様式と全く同一であり、エントレインメントは示さなかった。一方右室流出路よりのペーシングでは心電図上constant fusionを認め、さらにペーシングレートの増加によりprogressive fusionが認められエントレインメントは明らかであった。エントレインメント中の伝導時間を測定すると、ペーシング部位より右室心尖部までは平均80msecであったが左室最早期興奮部位までは平均408msecと著明に延長しており、本研究者が以前発表した心筋梗塞に合併した心室性頻拍症と同様に、遅い伝導部位を回路内に有するリエントリーが頻拍症の発症機序と考えられた。またベラパミルはこの遅い伝導を更に遅延させたことより、遅い伝導の機序としてCaチャンネル依存性の伝導が関与していると考えられた。
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