左室起源の特発性心室性頻拍症がリエントリ-によること、そしてその回路内には遅延伝導部位が存在することを既に明らかにしたが、抗不整脈剤がリエントリ-回路にどのように作用するかについて検討した。通常の方法にて心室性頻拍症を誘発し、エントレインメント現象を確認し、ペニシング部位より頻拍症の最早期興奮部位までの伝導時間および右室内伝導時間を測定した。最早期興奮部位までの伝導時間は417±21msecで、右室内伝導時間は80±10msecであり、前者に遅延伝導が存在すると考えられた。ベラパミル投与後、心室性頻拍症のレ-トは平均23拍/分減少したが、エントレインメント中に測定された伝導時間は最早期興奮部位までが498±45msecと有意に延長したのに対し、右室内伝導時間は80±10msecと不定であった。すなわちベラパミルはリエントリ-回路内の遅延伝導部位に選択的に作用し、伝導時間を延長し、その結果頻拍症のレ-トが減少したことが示された。以上の抗不整脈剤の選択的作用が、器質的心疾患を合併した心室性頻担症においてもあてはまるかどうかを検討する目的で、陳旧性心筋梗塞後再発をくり返した心室性頻担症のエントレクンメントを行い、同様の方法で遅延伝導に対するI群抗不整脈剤(プロカイソアミド)の効果を検討した。その結果、プロカインアミドは右室内伝導時間を軽度延長したが、最早期興奮部位までの伝導時間を著明に延長し、用量依存性に局所性ブロックを〓し、頻拍症を停止させた。特発性心室性頻拍症と同様に、抗不整脈剤がリエントリ-回路内の遅延伝導部位により強く作用するとが示された。このことは抗不整脈剤の頻拍停止機序を示すものと考えられる。
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