ラット心の刺激伝導系にAngiotensinII(ANGII)、Atrial Natriuretic Peptide(ANP)、Neuropeptide Y(NPY)のreceptorが存在するか否かを定量的receptor autoradiographyを用いて検討し以下の結果を得た。 ANPおよびNPYのreceptorはラット心筋および刺激伝導系には、ほとんど存在していなかった。ANGII receptorは心筋にはわずかに存在するのみであった(10fmol/mg protein以下)、刺激伝導系には密に存在していた(洞結節28.6±5.9、房室結接72.2±6.8fmol/mg protein n=6、mean s±S.E.)。また心拍数や心収縮力に影響を与える節後交感神経を出している星状神経節には、ANP、NPYおよびANGIIの3者のreceptorが存在していた。このことはANPおよびNPYは刺激伝導系に直接作用するのではなく星状神経節を介して心拍数に影響を与えていると考えられた。ANGIIは直接、刺激伝導系のreceptorを介して心拍数に影響を与えていると考えられたので摘出ラット心を用いて生理作用を検討した。 ラット心を定流潅流下(6ml/g)で心電図を記録し、1μM^<(-)>propranololを潅流し、さらに1nMのANGIIを潅流してその影響を観察した。 1μM^<(-)> propranololで潅流すると全例、心拍数の低下およびP-R時間の延長を認めかつ2匹は房室ブロックとなった。1μM^<(-)>propranolol存在下で1nMのANGIIを潅流すると全例において心拍数の増加およびP-R時間の短縮を認め、さらに房室ブロックも洞調律に回復させた。以上よりラット心の刺激伝導系は血中のANGIIを直接感知して心拍数を増加すると考えられた。
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