研究課題
胸部の微少高周波定電流の印加によるインピ-ダンス変化は胸部を流れる血流、肺、胸廓を構成する組織により決定される。この胸部インピ-ダンス法は循環に関するより多くの情報をもたらすがわれわれは、胸部基礎インピ-ダンス値(Zo)より肺水腫を客観的に評価を試みた。すなわち、うつ血性心不全による肺水腫15例、心臓カテ-テル検査施行例45症例、健常者100例について、胸部を円錐台モデルとして平均電気抵抗率をρ chest=Zo/L×(C_1^2+C_2^2+C_1+C_2/12π)により求めた。C_1、C_2は頚部と頚状突起部に装着したテ-プ電極の周囲長であり、Lは両電極間の距離である。この際、印加電流の周波数を2〜200kHzに変換すると抵抗率は10kHzピ-クを示し、肺水腫例ではどの周波数でも有意に低値であった。また、除水によりρ chestは経時的に上昇した。次に動物実験による肺内水分量(肺水腫)の定量を犬について行ったが、ρ chestの個体差が大で良好な結果をうることが出来なかった。そこでウサギの頚部に2点、剣状突起の高さに4点の電極を皮下に埋め込み、これらによって形成される頚部と上腹部の面電極として接続し胸部大静脈内に挿入したカテ-テル電極との間に2〜300kHz、120μAの定電流を印加し、電気抵抗値Zoを測定した。肺水腫は70%デキストラン液負荷により作成し、Zoと同時に中心静脈圧(CVP)と肺乾燥重量法により肺血管外水分量(PEWV)をPierse・山下の変法に基づき測定した。2〜300kHzの周波数でZoとPEWV、CVPは有意な相関を示し、10kHzではPEWVとr=0.87、CVPと0.93と最も高値であった。従来の胸部impedance cardio-graphyでは印加した電流が肺内を均等に通過しないため、個体の経時的な変動の評価には有用であるが、肺内水分量の正確な定量、個体間の比較は困難である。実験的には下大静脈内に電極の一つを挿入することにより得られるZo値より肺内水分量の推定が可能であるとの成績を得た。
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