研究概要 |
我々はこれまでヒト血清蛋白であるprolineーrich protein(PRP)の分離、精製を行い1)分子量はSDS上74,000,ゲル濾過上350.000で、8%の糖を含有する蛋白質である事、2)急性炎症蛋白の一種である事、3)トリグセライド・リッチ・リポ蛋白と正相関し、アポリポ蛋白としての特徴を有する事を報告してきた。 本年度はPRPの合成臓器について検討を加えた。まず肝での合成の有無を調べるため各種肝疾患におけるPRP濃度を測定した。その結果、肝硬変及び慢性肝炎において正常コントロ-ルより低値を認めた。又、肝での蛋白合成亢進状態である脂肪肝においてはコントロ-ルと比べ高値を認めた。各種肝機能検査と血清PRP濃度の検討では、コリンエステラ-ゼ濃度及びレシチン・コレステロ-ル・アンルトランスフェラ-ゼ活性と正相関を認めた。以上の臨床的検討結果よりPRPは肝で合成されている可能性が示唆されたので、病理解剖時に得た肝組織を我々が作製した抗PRP血清を用い免疫組織染色法にて調べた。又、脾臓および小腸も同様に染色を行った。その結果、肝の中心静脈周囲の肝細胞に抗PRP血清に反応する細胞を多数認めた。小腸には反応全く認めず、脾臓においては極く軽度反応を認めた。以上の臨床的および免疫組織学的検討結果から考えPRPの合成臓器は少なくとも肝である事が明らかとなった。急性炎症性蛋白質及びアポ蛋白は大部分肝で合成されている事が確認されており今回得られたPRPの結果もそれらと一致する結果であった。更にマクロファ-ジ系での合成について現在検討中である。又、PRPがトリグリセライド・リッチ・リポ蛋白と関連する事から動脈硬化への関与について次年度検討を加える予定である。
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