プロテアーゼインヒビター活性測定方法をα2-macroglobulin、α1-antichymotrypsinについて検討し、安定した測定方法を考案した。これにより小児の各種疾患における血中プロテアーゼインヒビター活性の測定を行なったところ、炎症性疾患における上昇特発性ネフローゼ症候群における活性全体の低下が認められた。また種々の疾患におけるプロテアーゼインヒビターの関与を髄膜白血病、特発性ネフローゼ症候群について明らかにした。これらの一連の研究により、種々のプロテアーゼおよびプロテアーゼインヒビターが炎症の進展に相互に関与していることが明らかにされた。 さらにプロテアーゼとそのインヒビターがリンパ球を主とした細胞性免疫抑制作用をもつことを小児特発性ネフローゼ症候群について明らかにした。このメカニズムとして生体中の内因性あるいは外因のなんらかのプロテアーゼとα-macroglobulinなどのインヒビターとの複合体が形成され、血中より速やかに除去されず、リンパ球芽球化反応に抑制的に作用している可能性が考えられる。 まず血漿交換後排液血漿を研究計画通り、α2-macroglobulinの精製に成功した。これらより精製されたα2-macroglobulinは1モルあたり、2モルのプロテアーゼを阻害し、正常の分子構造を有していると考えられる。試験的にノラットを用いて皮膚に種々の異種抗原を注射し、炎症の発現と進展に関与する血管透過性を精製α2-macroglobulinが抑制するか、検討しているが結論を出すには至っていない。
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