血漿交換療法の際にに得られた大量のヒト血漿を用いてα2ーmacroglobulinの分離精製を行なった。これを用いて以下の実験を行なった。 1.ネフロ-ゼ患者の血管透過性に対する抑制効果 ネフロ-ゼ初発時、再発時、寛解時、気管支喘息、起立性調節障害、健常人の血漿をラット腹部皮下に100μ1注射し、Pontamine Sky Blue(5%)を静注30〜50分後に判定を行なった。その結果ネフロ-ゼ再発時患者血漿単独では20x20mmであったが、精製α2ーmacroglobulinを同時に投与した場合には16x16mmであり、やや血管透過性亢進が抑制される傾向がみられた。しかし実験方法が肉眼的判定にたよらざるを得ないため対照群との差異が明瞭でないため、今後さらに客観的方法により検体数を増して再度検討する必要がある。 2.α2ーmacroglobulinープロテア-ゼ複合体による細胞性免疫抑制効果 精製プロテア-ゼインヒビタ-を投与した場合、それが免疫系に如何なる影響を及ぼすか検討するため、キモトリプシンと精製α2ーmacroglobulinをin vitroで反応させて複合体をつくり、ヒトリンパ球幼若化反応に対する抑制作用について検討した。この結果、遊離型α2ーmacroglobulinではほとんど抑制作用はみられないものの、複合体型ではConA刺激によるリンパ球幼若化反応抑制効果がみられた。従って精製α2ーmacroglobulinによる治療を行なう場合には細胞性免疫抑制作用に注意する必要があるが、その体内からのタ-ンオ-バ-は数時間と報告されているため、マクロファ-ジ機能が正常であれば問題はないと考えられる。
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