1.血漿交換後排液血漿を用いてα2ーmacroglobulin(α2ーM)を精製した。精製されたα2ーMは1モルあたり、2モルのプロテア-ゼを阻害し、正常の分子構造と機能を有していると考えられる。これをマウスの腹腔内に投与したところ賢組織に運ばれ、メサンギウム領域に沈着することを確認した。これは小児の賢炎患者に認められたα2ーMの沈着様式とは本質的に異なるmacromoelcular trnsport mechanismによると考えられる。従って実験賢炎などにおけるα2ーMの糸球体障害予防効果をその腹腔内投与によって検討することが可能との結論を得た。 2.α2ーMによる細胞性免疫への影響をin vitroで検討した。即ち、chymotrypsinとα2ーMの複合体をin vitroで作成し、ヒトリンパ球のConcanavarin A刺激による芽球化反応に対する抑制作用を検討した。その結果、遊離型α2ーMはヒトの生理的血中濃度と考えられる濃度範囲内では免疫抑制効果をほとんど示さないのに対し、複合型chymotrypsinーα2ーM複合体はリンパ球の芽球化反応抑制作用を強く示すことを明らかにした。従って遊離型α2ーM投与を行なった場合には免疫抑制作用を考慮する必要はないものと考えられる。 3.最近プロテア-ゼインヒビタ-とフリ-ラジカルとの相互関係により注目されているグルタチオンの血中濃度を測定したところネフロ-ゼ患者で低下が認められた。今後α2ーMとsperoxidedismutaseなどフリ-ラジカル除去系との関連に興味をつなぐ成績であった。 4.精製α2ーMを用いてネフロ-ゼ患者の血管透過性に対する抑制効果を検討した。ネフロ-ゼ初発時、寛解時、再発時、寛解時、気管支喘息、起立性調節障害、健常人の血漿をラット腹部皮下に100μ1注射し、Pontamine Sky Blue(5%)を静注30ー50分御に判定を行なった。その結果ネフロ-ゼ再発時患者血漿単独では20x20mmであったが、精製α2ーMを同時に投与した場合には16x16mmであり、やや血管透過性亢進が抑制される傾向がみられた。しかし実験方法が肉眼的判定にたよらざるを得ないため、今後さらに客観的方法により再度検討する必要がある。
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