免疫グロブリン産生不全症を対象に免疫学的・遺伝子学的解析を行なった。 対象のcommon variable immunodeficiency(CVI)6例はいずれも無(低)ガンマグロブリン血症を呈し、pokeweed mitogen 誘導免疫グロブリン(Ig)産生系を用いた検索やstaphylococcus aureus cowan 1およびrecombinant interleukin 2を用いた検索からB細胞機能に異常を認めた。その異常はB細胞の活性化・増殖・分化の一連の機構に存在すると考えられた。 そこでこれらの患者のIg遺伝子の構造とその発現につき遺伝子学的にまず解析した。末梢血顆粒球よりgerm line DNAを抽出し、種々の制限酵素で切断してヒトCμ、Cr_1、Ck、Jhプロ-ブを用いてSouthern blotを行なった結果、いずれもSouthern hybridizationで認められるような大きなdelationまたはmutationは存在しないと考えられた。 このようにIg構造遺伝子には異常を認めなかったことから、ひきつづきCμ、Cr_1、Ck鎖遺伝子発現について検討した。すなわち末梢血リンパ球単球分画からRNAを抽出し、ヒトCμ、Cr_1、Ckプロ-ブを用いてnorthern blotを行なった。その結果、多くの症例ではいずれの遺伝子の発現もないかあるいは軽度であったが、一部にCμ鎖遺伝子発現が強く認められるものがあった。多くの場合このように遺伝子発現までの過程に異常が存在すると考えられたことから、EBウイルスを用いて患者B細胞株を樹立してそのIg遺伝子につき検索した結果、Ig遺伝子の再編成が確認されたものと確認されなかったものがあった。 次に患者B細胞の活性化・増殖の指標としてc-myc遺伝子発現を調べたところ症例によりその発現は種々であった。 以上より、免疫グロブリン産生不全症の発生機序として、B細胞の活性化異常、Ig遺伝子再編成異常及び発現異常など異質性が明らかになった。
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