1.〔軟膜-グリア障壁発生に関する基礎研究〕ラットおよびマウスの新生仔および妊娠後期胎仔について、そのくも膜下腔および大脳皮質表層を含む組織切片を作成し、ラミニン、ビメンチン、グリア線維酸性蛋白等を用いて、神経細胞、放射グリア、血管間葉系の相互関係を中心に光顕的な検討を続けている。正常動物ではくも膜下腔にグリア線維酸性蛋白陽性のグリア組織が含まれることはほとんどなく、またビメンチン、グリア線維酸性蛋白により、放射グリアが染め出され、その細胞体は主にsubventricularおよびventricular zoneにあり、脳表限界膜部に終末をもつことが示された。 2.〔皮質奇形モデルの作成〕新生ラット・マウスを用いて、大脳皮質表面に限局的な凍結損傷を加え、限界膜を直接的に破壊することにより、グリア間葉組織の脳表面における増殖とこれに引き続く細胞遊走異常を企画し、実験を続けている。実験動物数がまだ少数であり、十分な神経細胞遊走異常を来たし、細胞構築の異常を惹起するところまでは至っていない。 3.〔FCMD人体例の検討〕FCMDの剖検例(胎児例を含む)について、とくに、大脳とともに広範な組織奇形を起こす。小脳皮質の奇形について詳しく検討し、小脳奇形の誘導に関しても皮質原基を覆う間葉組織のとくに皮質に入り込む血管周囲での増生が重要な役割を果たしていることが確認された。また大脳に比べ異所性グリアは僅かであった。従って、大脳において顕著な異所性グリア増殖も髄膜-グリア障壁の破壊によりグリア細胞が髄膜組織内に進入した結果による二次的蓄積である可能性があり、大脳奇形の発生についても、結合組織増生とグリアの誘導との関係を今後より詳しく検討する必要がある。
|