研究課題/領域番号 |
63570437
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
小児科学
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
高田 邦安 鳥取大学, 医学部, 助教授 (00105909)
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研究分担者 |
河原 仁志 鳥取大学, 医学部・附属病院, 助手 (00186123)
宝道 定孝 国立精神, 神経センター神経研究所疾病研究第二部, 非常勤流動研究員 (70192317)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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キーワード | 福山型先天性筋ジストロフィ-症 / 大脳皮質、形成異常 / 胎生期 / 神経細胞の遊走 / 膜軟膜-グリア境界 / PIA MATER |
研究概要 |
本研究は福山型先天性筋ジストロフィ-症(FCMD)の脳奇形が「胎児期のくも膜下腔でのグリア間葉組繊の増殖と軟膜・グリア障壁の欠損のため神経細胞の遊走異常が惹起され、くも膜下グリア間葉組織内に遊走途上の神経細胞が異所性に集積し、細胞構築異常をきたす」との仮説の検証と基礎研究のため、胎児を含むヒトFCMD剖検例の神経病理学的解析に加え、小動物大脳皮質表層部に種々の負荷を加えてくも膜下腔・皮質最上層におけるグリア間葉成分の異常増殖を惹起させ大脳皮質奇形を作成することをめざした。 FCMDと近縁の皮質形成異常である無脳回についてゴルジ染色標本を解析し神経細胞が遊走途上で遊走停止し皮質下に集積するというFCMDとはことなる発生機序を支持する結果を示した。また、局所的に小多脳回を伴った孔脳症および水頭脳症の4剖検例を検討し、FCMDの脳奇形との比較を試みた。 軟膜-グリア障壁発生に関する基礎研究は、妊娠後期のラット胎仔ないし新生仔のくも膜下腔及び大脳皮質表層を含む組織について、おもにグリア線維酸性蛋白に対する抗体を用いた免疫組織化学および電子顕微鏡により、軟膜-グリア障壁の構成要素である基底膜、放射グリアと遊走神経細胞、血管間葉系成分の相互関係を検討した。 皮質奇形モデルの作成に関して、当初、孔脳症の周囲に見られる小多脳回と同じく局所的な脳損傷に併発する皮質奇形の成立を目指し、新生ラットおよびマウスの大脳皮質に限局的な凍結損傷を加え、限界膜を直接破壊することによってグリア・間葉組織の脳表面における増殖とこれに引続く細胞遊走異常を誘導することを計画した。結果としては限局性の皮質壊死とこれに引続く孔脳症形成と随膜附近のグリア増生を認めたが、皮質構築異常の誘導には至らなかった。次に、神経毒の一種である6-hydroxydopamineを生直後のラット大槽内に局注する方法で小脳奇形の誘導を試みている。現在の所、局所に軽度随膜肥厚の所見を得、水頭症を小数例に見たが、小多脳回に類似する奇形を作ることは出来ていない。以上、動物実験によってFCMDと類似の奇形を形成することにはまだ成功に至らず、十分な成果を得たとは言い難いが、人体例における検討ではいくつかの新知見を得ている。引続き、本疾患の脳奇形成立の解明にあたりたい。
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