今年度は、主に、デオシキアデノシンのDNA障害作用とDNA前駆物質プールのバランスの関係について、ADAを不活化したヒト末梢リンパ球において検討した。得られた結果の要点は、1)デオキシアデノシンによってもたらされるDNA障害は、他の3種類のデオキシヌクシオシドのうちいずれの1種類の同時添加によっても阻止される、2)それらのデオキシヌクレオシドの作用は、dATPの蓄積を阻害することによるものではなく、微細なdNTPプールのバランスを回復させるためと推論される、であった。さらに研究を展開し、DNA修復能に及ぼす影響を検討したが、デオキシアデノシンはDNA修復を阻害し、他のデオキシヌクレオシドはそのデオキシアデノシンの作用をreverseしてDNA修復を促進した。以上のことから、ヒト成熟リンパ球においては、少なくとも2種類の細胞内dNTP濃度によってDNA修復が調節されていて、相対的なdNTPの上昇がDNA strand breakの蓄積をもたらすと結論された。 以上の研究成果を付随する他のデータとともに、第22回日本プリン・ピリミジン代謝学会において、"DNA修復能測定へのDNA alkaline unwinding assay法の応用"と"DNA前駆物質プールのアンンバランスとDNA障害"の2題のなかで発表した。誌上発表は別項に記載のものと現在準備中の2編である。 本年度の後半から取り掛かり進行中のものは、B細胞とT細胞のデオキシヌクシオシドやDNA修復阻害剤の細胞障害性に対する感受性の相異について、末梢成熟リンパ球およびB、T cell leneを用いた検討である。
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