T細胞レセプタ-(TCR)は、従来単一と考えられていたが、1986年夏に初めて、Brennerらにより第二のTCR γδ型の存在が示された。しかしヒトにおいてγδT細胞の機能は不明な点が多い。現在まで免疫不全症、感染、自己免疫疾患などで増加することが報告されている。今回、I型自己免疫性多腺症候群に赤芽球勞を合併した例において末梢・骨髄リンパ球中に著増したγδT細胞の形態的機能的検討を行なった。末梢血に増加したγδT細胞は、顆粒リンパ球の形態を有し、遺伝子解析にてモノクロ-ナリティは認められなかった。患者の末梢リンパ球機能検査では、PHA、ConA、カンジダ抗原には反応が極めてわるかったがCD3モノクロ-ナル抗体、PPDに対して比較的保たれていた。アロや自己のリンパ球混合培養では反応が著明に低下していた。このγδT細胞は生体内で活性化されていると考えられ、K562細胞などに細胞障害性を有しており、その細胞障害性はCD3やγδTCRに対するモノクロ-ナル抗体でブロックされた。さらに患者γδT細胞は正常ヒト造血幹細胞のBFUーEを抑制し、CFUーGMを抑制しなかった。そのBFUーEに対する抑制はIgM抗CD3モノクロ-ナル抗体でほぼ完全に、抗γδTCRモノクロ-ナル抗体で部分的に解除された。T細胞培養上清も同様にBFUーEに対しつよい抑制効果を有していたので、γδTCRが直接BFUーE細胞を認識しているのではなく、T細胞由来液性因子が抑制に関与しているようである。この患者においてはγδT細胞異常増殖が赤芽球勞の病態に深く関与していると考えられる。
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