SLEを自然発症するMRL/lprマウスは、依然原因不明なヒトSLEのモデルとして有用である。今回私達は、SLE発症ときわめて密接な現象であるリンパ節腫脹を担う異常T細胞の解析より病因に迫ろうと考えた。リンパ節に集簇する異常リンパ球は、汎T細胞マ-カ-とpreB細胞マ-カ-を発見しており、T細胞lineageにおける位置が明確でなかった。そこで私たちの開発したT幹細胞を認識する単クロ-ン抗体:Scaー1を用いて検討するとlprーdnT細胞はB220と共にScaー1を発現していた。従ってlprーdnT細胞は骨髄より胸腺へ流入する前段階に位置する細胞であることが明らかになった。つぎにScaー1抗原の発現を指標にしてlprーdnT細胞の出現とSLE発症との関連を検討した。lpnマウスではSLE発症前の5週齢においてすでに骨髄中にScaー1陽性細胞の増多がみられ、12週齢では胸腺・未梢リンパ器官においてSeaー1陽性細胞が著増していた。ところでScaー1と他のT細胞分化抗原の発現を胸腺とリンパ節において検討すると、未梢リンパ節ではScaー1陽性細胞のほとんどはB220陽性であったが胸腺ではB220(ー)/Pgpー1(ー)のScaー1陽性細胞が増多しており、同じScaー1陽性細胞でも胸腺と未梢リンパ節とでは異なる分画であることが示唆された。lpr異常T細胞の生体内器官での流入・流出のdymamicsの検討が必要であると思われた。lprーdnT細胞はこれまでの検討で、ILー1/ILー2/IFNーrなどの産生がみられず、細胞障害性機能も認められていない。またアロ抗原に対する反応性もない。そこでdnT細胞の機能を検討する目的で、duT細胞の培養上清中の生物活性因子の検索を行なった。NRK144細胞の増殖活性を指標にして検討したところ、EGF依存性にNRK144に対し増殖能をもつ分子量2万〜3万の増殖因子が同定され、TGFbeta様因子であった。SLE発症におけるTGFbetaの役割について今後研究が必要であろう。
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