実験動物としてはマウスを用い、高熱によって痙攣を誘発させ、痙攣直後のセロトニンニューロン系の形態学的変化を高感度の免疫組織化学法を駆使して検索した。具体的には、生後12週、同腹の雄マウス(JclーICR)を50℃の高温環境下に置き痙攣を誘発させる(痙攣群)。痙攣直後に左心室より4%パラホルムアルデヒド溶液を用いて灌流固定し、セロトニンの免疫組織化学法をほどこし脳の連続切片標本を作製する。高温負荷をかけ痙攣を起こさないマウス(高温群)、高温負荷をかけないマウス(対照群)についても同様に免疫組織標本を作製する。線条体に焦点をあて光学顕微鏡的観察の結果、以下の新知見が得られた。 1.対照群のマウスの線条体でセロトニン線維の分布に不均一性があり吻側より尾側、背側より腹側、内側より外側で分布密度が高い。 2.高温群では対照群に比し、尾側部を除いて線条体におけるセロトニン線維の増加(免疫染色性の増加)が認められる。 3.痙攣群では線条体のすべての部位で、セロトニン線維の免疫染色性が著減する。 4.一方、新皮質や淡蒼球では、対照群・高温群・痙攣群の各群でセロトニン線維の分布密度に変動は認めない。 以上の結果より、セロトニンニューロン系は高温一痙攣の過程で、極めてダイナミックに変動し、とくに線条体におけるセロトニンの役割が重要と考えられる。さらに、線条体内でもセロトニンニューロンの態度は著しく異なり、現在MOPシステムを利用した組織化学的定量法により詳細な検討を加えている。今後、他の痙攣モデルマウス(ピロカルピン負荷など)について、同様の免疫組織化学的研究を行ない、痙攣の病態におけるセロトニンの動態および役割を追及する予定である。
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