研究概要 |
脳の成熟過程における細胞膜成分の変化を神経主化学的に検討することは、各種年齢依存性疾患の基礎病変を理解する上で重要である。ガングリオシド(ggl.)は神経細胞外膜に高濃度に含有されていることにより、ggl.が脳の成熟に重要な役割をなしていることが知られている。髄液ggl.分画比率が脳全体のものに類似している事により、臨床上、髄液ggl.分析より脳の成熟障害を検討することが可能となる。West症候群患児の髄液ggl.濃度の低値と脳成熟障害の関連性を検討する目的で、新生児から小児例における髄液ggl.の発達年齢的変化を検討した。 [対象及び方法] 対象患児の基礎疾患は新生児痙攣、熱性痙攣、髄膜炎の疑いやその回復期、てんかん等で、髄液採取をし、その髄液に細胞増多や出血、蛋白上昇がなく、患児に明らかな精神運動発達遅滞のない症例20例を対象とした。年齢は新生児から8歳までであった。髄液は測定まで-80℃に凍結保存していたものを使用した。測定方法はHirabayashiらのTLC-酵素免疫染色法に準じ、抗GAI抗体を第一次抗体として測定した。 [結果及び考察] 抗GAI抗体による定量法ではGMI,GDIa,GDIb,GTIb,GQIb,の五種類のガングリオ系列ggl.が検出された。髄液中の総ガングリオ系列ggl.濃度は新生児、乳児、幼児各群において539,1486,1572ng/mlCSFと上昇をなすもGMIやGDIaの増加は乳児期以向はわずかであった。GQIbは乳児期以向に出現して来、GTIb,GQIbは年齢ともに増加傾向を示した。新生児未熟例(IUGR)においてはggl.は低値で、AFD例に比して脳成熟の遅滞が示唆された。West症候群では新生児程度のggl.濃度であり、脳成熟の早期より発達が障害されている可能性を示唆さた。
|