研究概要 |
ライ症候群はミトコンドリア異常を伴う脂肪肝と脳浮腫、意識障害を誘発する原因不明の疾患である。初年度、4ーペンテン酸(4ーPA)によるラットのライ型脂肪肝で膜内リン脂質の脂肪酸組成とプロスタグランジン合成能の異常を報告し、さらにジメチルPGE2の併用投与による脂肪肝の改善を光学顕微鏡にて証明した。次年度はこのジメチルPGE2の効果を電子顕微鏡と生化学的手技により詳細を検討した。4ーPAによる脂肪肝は微小脂肪滴よりなり核の偏位がなくミトコンドリアと小胞体の異常を伴うものであり、ジメチルPGE2併用投与により脂肪滴の減少とミトコンドリア並びに小胞体の改善を認めた。肝脂肪をリン脂質、コレステロ-ル、遊離脂肪酸、トリグリセリドにわけて測定したところ、4ーPAによりトリグリセリドのみの著名な増加がみられ、ジメチルPGE2併用投与によりこの増加は優位に押さえられた。グリコ-ゲン減少の改善は見られなかった。4ーPA処理群でコレステロ-ルの軽度減少を認めた。終年度にかけて、脳浮腫原因解明のためにラット脳スライスでのヒドロキシアラキドン酸(HETEs)とロイコトリエン(LTs)合成と水分保持量を検討した。マルゴサオイル(MO)と反応させるとスライス中の水分量の増加が見られたが濃度依存的でなかった。脳スライスをCaイオノフォアと反応させると15HETE,12HETE,LTC4が合成され、低濃度のMOを予め添加しておくと15と12HETEが増加しているようにみえるが、幾つかのHETE類似の不明ピ-クの出現がみられ詳細な評価が困難であった。免疫細胞であるU937とHL60は4PA 40ul/15mlで増殖を24%まで抑制するが、これ以下の濃度でHETEとLTs産生を検討したがUV感度でのHPLC分析は不可能であった。マウス腹腔内細胞で現在検討中である。
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