研究概要 |
昨年度までの研究により、尋常性乾癬皮疹部表皮においては、コレラ毒素ならびにフォルスコリンによるcyclic AMP上昇作用が増強している事が示された。(J Invest Dermatol 91:154-157,1988)。またtumor promoterであるTPAはprotein kinase Cを介して表皮adenylate cyclaseに働き乾癬表皮と類似した作用う示すことも明らかとなった。(J Invest Dermatol 93:387-391,1989)。 本年度の研究においては、まず表皮adenylate cyclase系に対するCa^<++>の作用が検討された。その過程でCa^<++>の濃度変化はadenylate cyclaseに対し事実上作用を及ぼさない事、またprotein Kinase C作用の特異性が明らかとなった。(Iizuka et al Br J Dermatol in press)。乾癬表皮において活性の亢進したphospholipase CはIP_3を介してCa^<++>シグナルを、Diacylglycerolを介してprotein kinase Cシグナルを作動させるものと推定されるが、adenylate cyclaseに関しては後者のシグナルのみが、影響を及ぼしているものと考えられる。 従来、乾癬表皮においては癌遺伝子であるras遺伝子産物が量的にふえていることが推定されている。ras遺伝子産物はGTP結合蛋白質familyに属し、その変動は各種情報伝達系に影響を及ぼすと考えられている。ras遺伝子はpoint mutationにより活性化がかかる事からPCR(polymerase chain reaction)法を用いて、乾癬におけるrasのpoint mutationの有無を検討した。全例においてpoint mutationが認められなかった事から、乾癬におけるrasの異常は、たとえ存在するとしても、過剰発現にとどまり、質的な変化を示さない事が明らかとなった。(Takahashi et al,Arch Dermatol Res in press)。
|