研究概要 |
昨年度までの研究により、乾癬皮疹部表皮とtumor promoterであるホルボ-ルエステル処理表皮の情報伝達系における類似性が明らかとなった。(Iizuka et al,J Invest Dermatol 93:387ー391,1989)。本年度はCa^<++>による影響について主に検討を加え、この結果、表皮アデニル酸シクラ-ゼはCa^<++>の変動により事実上影響を受けないことが示された(Iizuka et al,Br J dermatol 122:459ー467,1990)。通常のprotein kinase Cは高濃度のCa^<++>により活性化をうける事が知られている。我々はすでにホルボ-ルエステル作用がprotein kinase Cを介するものである事を明らかにしており、Ca^<++>上昇が表皮アデニル酸ミクラ-ゼに影響を与えないという今回のデ-タは、一見、矛盾するものであった。最近、表皮のprotein kinase Cは大部分がCa^<++>の反応しない新いタイプのものである事が示された(Osada et al,J Biol Chem 印刷中)。我々は、この新しく見出されたprotein kinase C (y type)が、表皮のアデニル酸ミクラ-ゼを制御しているという作業仮説のもとに、protein kinase Cの局在を含め検討する予定である。またホルボ-ルエステルは、いくつかの細胞系において蛋白合成系を介して作用をあらわす事が示されているが、少なくとも表皮アデニル酸シクラ-ゼの制御については否定的であった。TPAにより誘導のかかる遺伝子の活性化機構としてAPー1(Fos:Jun)ヘテロダイマ-の作用機構が急速に明らかになってきているが、表皮アデニル酸シクラ-ゼの制御については直接関係がないものと推定される(Iizuka et al,投稿準備中)。乾癬表皮においては、ホスホリパ-ゼCーprotein kinase C経路が強く活性化がかかっているものと推定されるが、正常表皮においては表皮ホスホリパ-ゼCを活性化する薬剤は、アデニル酸シクラ-ゼに影響を与えなかった(Iizuka et al Br J Dermetol 投稿中)。
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