今年度は、7型コラーゲンに対するモノクローナル抗体を作成する予定であったが、ヒト羊膜からの7型コラーゲン抗原の抽出、精製の過程が予定のごとく進行せず、抗体作製まで至らなかった。そこで、1990年に予定していた。先天性表皮水疱患者皮膚における抗7型コラーゲンの検索実験の一部を、すでに作製したポリクローナル抗体を用いて行った。すなわち、免疫組織学的検索で、7型コラーゲンは正常ヒト皮膚では表皮基底膜部に線状陽性であるのに対して、劣性栄養障害型表皮水疱症 (R型と略) の患者の一部では陽性所見を欠くことが明らかになったので、R型患者皮膚で7型コラーゲンが産生されているか否かを検索する実験を行った。方法は、2例のR型男性患者 (32歳と14歳) の皮膚から線維芽細胞を分離して培養し、細胞抽出液に7型コラーゲンが含まれているか否かを、7型コラーゲンポリクローナル抗体を用いたインムノブロット法により検索した。対照は正常ヒト皮膚から得た線維芽細胞である。その結果、正常皮膚の線維芽細胞抽出液からは、17kDの7型コラーゲンが検出されたが、R型患者の抽出液からは検出されなかった。このことは、免疫組織学的検索から、本病型では7型コラーゲンが欠損していることを推測した我々の見解を、生化学的に支持する所見と考える。今年度に予定していたモノクローナル抗体の作成実験は遅延しているが、今後も完成に向けて努力する。しかし、本研究の最終目的が、7型コラーゲンの病態生理の究明とその診断学的応用にあることを想起し、モノクローナル抗体作成実験と同時に、今年度行った、ポリクローナル抗体を用いた臨床研究も、症例を増やし、また他の病型にも拡大して検索することとしたい。
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