我々はこれまでの研究で、7型コラ-ゲンは健常皮膚おいては表皮真皮境界部に存在すること、また電顕的にはanchoring fibrilに局在することを明らかにした。さらに、重症劣性栄養障害型先天性表皮水疱症患者では7型コラ-ゲンが欠損していることを見いだし、このことが本症の水疱発生の機序に重要な役割を担っていると推測した。この仮説を実証するために1)7型コラ-ゲンに対する単clonal抗体を作製して、他の病型も含む多数の症例についてのin vivoの検索を行い、2)表皮細胞と線維芽細胞を同時にかつ別々にコラ-ゲン膜の両面に培養する2相分離培養法を用いたin vitroの実験で、7型コラ-ゲンの生成実験を行うこととした。このうち1)については単clonal抗体の作製が予定通り進行しなかっこと、多数の症例を集積することが難しいことの理由で平成元年度は保留期間とし、2)のin vitro実験を重点的に行った。この実験は、表皮細胞と線維芽細胞を、健常者由来あるいは先天性表皮水疱症患者由来のものとして、7型コラ-ゲンの生成を免疫組織学的に比較検討するものである。平成元年度においては、この実験の基礎的検討を行った。すなわち、健常皮膚から採取した表皮細胞および線維芽細胞を透過性コラ-ゲン膜の両面に分離して培養し、免疫組織学的および電顕的に観察した。その結果、培養14日目において、コラ-ゲン膜の一面には角化細胞が10-14層に重層して、電顕的には正常表皮における角化細胞に近い分化を示していること、他の面には線維芽細胞が単層で増殖していることが確認できた。しかし、基底細胞下面においては半デスモゾ-ム、anchoring fibrilはみられなかった。免疫組織学的には、角質細胞は68KDの高分子ケラチンを表出し基底細胞の下面では類天疱瘡抗原が検出された。7型コラ-ゲンを含むその他の基底膜成分についての検索は今年度の実験で行う予定である。
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