研究概要 |
マウスの免疫系の研究よりマウスでは、末梢helperT細胞は少なくとも2つの亜群よりなることが知られている。IL-2反応性であり、IL-2,IFN-γなどの産生に関わるT_<h1>、IL-4反応性であり、IL-4、IL-5などを産生し、IgE抗体産生、遅延型過敏反応をおこすT_<h2>である。人に於いても、マウスと同様の亜群が存在すると考えられており、Sander等はこれをnaiveT細胞、memoryT細胞とし、同系列の異なる分化段階にある末梢helperT細胞であると提唱した。皮膚は、直接外的環境と接する場の1つであり、そこにはLuger TA等が示すように、角化細胞、Th-1陽性樹枝状細胞、ランゲルハンス細胞等の表皮内細胞、真皮内諸細胞を交えた繊細な免疫ネットワ-クが形成されている。皮膚T細胞性リンパ腫においては長期間に渡り皮膚を主たる病変部位としている。このような性質も、皮膚免疫機構と大きく関わりをもっており、腫瘍細胞が正常細胞の機能を表現しているほど、この皮膚免疫機構からの制約を受けていると考えられる。そこで、このT細胞のT細胞分化過程での位置付けについて、免疫組織化学、DNA解析等により検討してきた。すなわち、homing receptor、分化抗原、機能性抗原などの膜表面形質についての免疫組織化学、臨床症状、臨床検査成績(皮膚向性、組織及び末梢血液好酸球、組織形質細胞増多)より、皮膚T細胞性リンパ腫のほとんどを占める菌状息肉症では、その腫瘍細胞はマウスのT_<h2>、人のmemoryT細胞の性質を示した。そこで、次にT_<h2>の阻害因子であるIFN-γの腫瘍細胞に対する増殖抑制効果について検討した。皮膚T細胞性リンパ腫患者より得られた、皮膚浸潤細胞をin vitroにて組織培養し、その増殖に対するIFN-γの増殖抑制効果についての検討を行った。その結果、組織中に好酸球、形質細胞の浸潤が著名に認められる症例では強い抑制効果が認められた。すなわち、T_<h2>の機能が強く認められた症例では抑制効果も顕著であった。
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