これまでの報告例を集め形態、組織化学、免疫組織化学、電顕などの所見を検討の結果、 (1)症例個々により上述所見にばらつきが多い、本症に特徴的ともいわれるNeuron specific enolaseにしても、必ずしも所見は一致しない。本邦例でも18例中16例が陽性を呈している。電顕所見にしても本症腫瘍細胞に特徴的な有芯小胞(メルケル細胞顆粒)の形態像は種々で必ずしも一致してはいない。 (2)正常メルケル細胞のもつ所見とも相違点が多い、腫瘍巣内には神経要素が認められた報告はない、有芯小胞が大きく、芯の明暈を伴わない例の報告もある。 (3)本来メルケル細胞は表皮に存在する。それにもかかわらず本症の腫瘍塊は真皮内に形成され、表皮とはclear zoneで隔てられており、連続性が認められない。 これらのことから、 (1)メルケル細胞癌が真に存在するのか、 (2)存在するとしてもこれまでの報告例には何種類かの異なる腫瘍が混在している可能性、などが検討される必要がある。 研究者の到達した最終的観点は、メルケル細胞顆粒に特異的はモノクロ-ナ-ル抗体の作製で、これによる本症の診断が必須と思われる。 これまでのところ(ブタ皮膚を用いて)2回モノクロ-ナ-ル抗体の作製を試みたがまだ成功するに至っていない。現在継続中である。
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