当該年度(1990年)の研究実績の概要は下記のごとくである。 1)ヒトの指先の皮膚のメルケル細胞ー神経複合体でNeuronーspecificenolase(NSE)を、電子顕微鏡レベルの免疫組織化学的を用い検討したところ、NSEはメルケル細胞に付着する神経終末には陽性であるが、メルケル細胞自体は陰性であることが解った。 2)マウスの毛盤のメルケル細胞ー神経複合体で、S100タンパク、メチオニンーエンケフアリン、サイトケラチンPKK3を電顕レベルの免疫組織化学で検討したところ、S100タンパク、メチニオンーエンケフアリンは神経終末に陽性であった。一方、サイトケラチンPKK3は陰性であった。 3)メルケル細胞癌の1例を経験し種々の検討を行った。自験例は、免疫組織化学的にNSE陽性であるが、電子顕微鏡的には有芯小胞が少ない症例であった。 4)ブタ皮膚を抗原とし、メルケル細胞に特異なモノクロ-ナル抗体の作製を試みたところ、表皮にあってはメルケル細胞にのみ陽性を示す抗体の作製にほぼ成功し、抗体のcharacterizationと抗原の細胞内局在の検討を開始した。 5)ラットの毛盤表皮ケラチノサイトの増殖能を^3Hーthymidineを用いたオ-トラジオグラフイで検討し、標識指数(L.1.)を求めた。毛包間表皮に比較して毛盤表皮では、新生時から成熟時にいたるまで、L.1.が常に高値であることが解った。一方、メルケル細胞へのチミジンの取り込みは観察されなかった。
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