本研究は癌細胞を殺傷するエフェクター細胞が放射線照射によって活性 化されるかどうかを究明することである。これまで、キラーT細胞、K細胞、NK細 胞およびマクロファージの殺傷作用に対する放射線効果が調べられた。キラーT細胞 、K細胞に関しては、細胞の調整等の実験的困難さがあり、十分な結果が得られなか った。一方、NK細胞とマクロファージの殺腫瘍活性に関する研究は当初の目的通り 遂行され、満足する結果が得られた。特にマクロファージに関しては、下記のごとく 新しい知見が次々と得られた。 (1) マクロファージの癌細胞殺傷作用は放射線照射 線量によって異った影響を受けた。0.3Gy〜3.0Gy照射では殺傷作用は亢進 (特に0.3Gyで著しい) し10Gy以上照射では低下した。 (2) マクロファー ジの殺傷作用亢進は照射マクロファージの腫瘍細胞と24〜36時間接触することが 必要であった。この活性は同系、異系マウス腫瘍細胞に対して同様に出現する。 (3 ) マクロファージの殺傷作用の放射線照射による亢進はCytostatic法、C ytocydal法及び幹細胞レベルでのColony法全てにおいて認められた。 (4) マクロファージの殺傷作用の亢進をもたらす0.3Gy照射は同時にマクロフ ァージのFcγ-レセプターを増加させる。 (5) 放射線照射によって活性化された マクロファージは^3H-プロリンの取り込みが増加した。このことは、低線量放 射線照射によって蛋白合成が促進したことを示す。以上の結果の一部は、本年度のu 31回放射線影響学会で発表され、又、日本医学放射線学会、生物部会誌に報告され た。さらに、腫瘍内マクロファージが放射線照射によって、殺傷作用が増加すること が最近の実験で得られている。NK細胞に関しては、殺腫瘍活性が、0.3Gy〜3 .0Gy放射線照射によって、わずかに亢進することが判明した。次年度は、腫瘍内 マクロファージとNK細胞に対する放射線効果を詳細に検討し、両細胞の放射線治療 中の癌エフェクター細胞としての役割を明らかにする。
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