基礎的検討としてヒト癌細胞を移植したヌードマウス、血栓を作成したウサギを用いて放射性ヨード、インディウムー111、ガリウムー67、テクネティウムー99mなどの放射性同位元素で標識したモノクローナル抗体を投与。経時的に抗体の体内分布を測定し、画像診断の基礎的な検討を行った。抗体の標識に用いるキレート剤および結合試薬によりその体内分布、腫瘍集積性は著しく異なる。生体内で放射性同位元素とモノクローナル抗体が安定した結合を示し、腫瘍に強く集積したのはチオエーテル(-C-S-)結合であることが明らかとなった。従って画像診断に用いる放射性同位元素と抗体の結合のみならず、抗癌剤とモノクローナル抗体の結合にもチオエーテル結合が最も望ましいと考えられた。 これまで癌に対するモノクローナル抗体は多数作製されているが、インビボ利用に適した抗体の選択法は確立していない。そこで放射性同位元素で標識したモノクローナル抗体と手術より得られた癌組織とを用いた簡便な方法を開発した。 臨床応用として悪性黒色腫、大腸癌患者を対象にインディウムー111標識モノクローナル抗体を用いるシンチグラフィの臨床的有用性を検討した。動物実験のみならず悪性腫瘍患者でも抗体は腫瘍に集積し、癌の部位、性状が明らかとなった。免疫組織染色による抗原の存在とシンチグラムの所見が一致し、抗原、抗体反応により放射性同位元素で標識した抗体が、腫瘍に集積すると考えられる。これらモノクローナル抗体を用いた画像診断は特異性に優れており、全身を検索できる有用な検査法で、これまで副作用は経験していない。
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