放射性同位元素で標識したモノクロ-ナル抗体は試験管内、生体内で対応する抗原に特異的に結合する。従って、核医学的手法を用いて標識モノクロ-ナル抗体の生体内分布を映像化することにより、癌、心筋梗塞、血栓症の画像診断ができるのみならず、副作用の少ない新しい癌治療法に発展するものと期待される。これまでの放射性同位元素標識モノクロ-ナル抗体を用いる研究をさらに発展させ、その安全性、臨床的有用性を検討するとともに、投与したモノクロ-ナル抗体の体内分布に影響する因子についても検討した。 動物実験ではI-131、In-111標識モノクロ-ナル抗体を用いて高い病巣/正常組織比が得られ、大腸癌、血栓症、心筋梗塞の画像診断を行うことができる。同じI-131、In-111標識モノクロ-ナル抗体をヒトに投与し、その臨床的有用性ならびに安全性を検討したが、いずれの抗体の投与でも副作用は認められず、安全に投与されることが確かめられた。例えばIn-111で標識したCEAに対する抗体ZCE-025を用いれば、5例中5例とも大腸癌の原発巣を診断することができる。またX線CTなどこれまでの画像診断では得られない情報を得られ、本法が大腸癌のスクリ-ニングにも応用されることを示唆する。しかし投与した抗体はいずれもマウス由来のため、患者血中に抗マウス抗体ができることは避け難い。F(ab′)_2、Fabを用いれば、抗マウス抗体はほとんど生じないことが明らかとなったが、大部分をヒト型としたマウス/ヒト・キメラ型抗体は、生じた抗マウス抗体とほとんど反応しないなど、安全性に関する研究も進みつつある。 今後さらに画像診断に適したモノクロ-ナル抗体の開発に伴って、同じ原理により治療への臨床応用も発展するものと期待される。
|