研究概要 |
放射線に対する培養細胞の反応については、Elkindその他により詳細な研究が為されており、SLD repair,PLD repairなどについて多くの報告がある。しかし、細胞の多分割照射に対する反応については現在まで報告は極めて少ないのが現状である。また、近年hyperfractionationといった多分割照射法が放射線治療に取り入れられるようになり、細胞レベルでの多分割照射の影響を理解することは、臨床的にも重要である。 放射線の多分割照射実験を行なうにあたっては、照射によって引き起こされるcell cycleのredistributionを最小限におさえる事が必要である。そこで我々はプラトー期の細胞で長期にわたり、細胞集団の殆んど動かなく、しかもcellのviabilityの落ちない細胞をさがす事から始めた。調べた細胞はV79、GHE NIH3T3 C3HOlT1/2であるが、多分割照射実験に十分に耐えられるのはlOT1/2細胞のみであった。そこで以後はすべてlOT1/2で実験を行った。まず最初にプラトー期lOT1/2でのSLDとslow typeのPLDのrepair kineticsを調べた。その結果は両方のrepairとも照射後6時間以内で完全に完了した。そこで多分割照射のスケジュールとして1日2回とし、その間のインターバルは6時間、1回2.5Gyを3〜9回繰り返すこととした。多分割照射後の生残率は、2.5Gy照射後SLD、PLDのrepairが多分割照射の過程で完全に起こったと仮定して得た理論的な生残率と比較すると、2.5Gy5回照射以後は常に理論値よりも低下していた。このことは多分割照射では回復能力が低下する可能性を示唆するものである。そこでSLD、slow typeとfast typeのPLDのrepairに対する対分割照射の影響を調べた。現時点では細胞のSLDとslow typeのPLDのrepair能力は多分割照射により低下し、fast typeのPLD repairは殆んど影響されないというpreliminaryなデータを得ている。今後さらに詳細に検討する予定である。またヒトの癌細胞でも実験を計画している。
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