研究課題/領域番号 |
63570495
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
前田 美保 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (90190313)
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研究分担者 |
川端 衛 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (50073789)
寺田 正樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (80188680)
浜地 順子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (10172983)
山田 龍作 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (90047085)
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キーワード | 肝細胞癌 / 肝動脈塞栓術 / 塞栓物質 / ゼラチンスポンジ / リピオドール |
研究概要 |
肝細胞癌は肝硬変を合併することが多く現在なお手術不能例が多数を占める悪性腫瘍である。手術不能肝細胞癌の保存的療法とした肝動脈塞栓術があり、その治療効果にはみるべきものがある。当初、塞栓物質としてゼラチンスポンジ(以下GS)が用いられ、現在、リピオドール(以下Lp)とGSの併用が普及しつつある。GSとLp併用後の抗腫瘍効果については多数の報告がみられるが非癌部肝組織に及ぼす影響についての報告は稀である。このため、その安全性を基礎的系統的にイヌを用いて検討した、昭和63年度には以下の実験を行なった。イヌ大腿動脈に購入した血管カテーテル挿入し、肝動脈に挿入する。血管造影を行なった後に塞栓物質を注入した。塞栓物質の種類により3群に区分し検討した。(1)GS単独群、(2)Lp単独群、(3)Lp+GS併用群である。検討項目は(I)3群のイヌを一週間観察しその生死の有無を観察する(II)一週間後に肝、肺、腎を摘出し病理学的検討を行なうの2点である。GS群7頭、Lp群9頭(Lp0.1ml/kg1頭0.2ml/kg1頭、0.5ml/kg1頭、1ml/kg1頭、2ml/kg1頭、3ml/kg1頭、4ml/kg1頭、5ml/kg2頭)Lp+GS群15頭(Lp0.1ml/kg+GS5頭、Lp0.2ml/kg+GS5頭、Lp0.5ml/kg+GS5頭)にそれぞれの塞栓物質をイヌ肝動脈に注入した。注入後、血管撮影を行ない肝動脈の塞栓状況を観察した。GS群7頭は一週後まで全頭生存し得た。Lp群では9頭中2頭が死亡した。死亡したLp注入量は4ml/kg、5ml/kgであった。Lp+GS群では15頭中7頭が死亡した。死亡した7頭のLp注入量は0.2ml/kg3頭、0.5ml/kg4頭であった。摘出肝の検討では、GS群、Lp群で肝に梗塞巣は認められなかった。一方、Lp+GS群では0.2ml/kg+GS群、0.5ml/kg+GS群で全例に梗塞巣を認めた。またLpの注入量に伴い梗塞巣の拡がる傾向を認めた。Lp+GS併用の塞栓術は必ずしも安全な塞全物質とはいえず、Lpの量に注意して使用することが望ましいと考えられた。次年度は組織学的検討を行ない、Lpの分布を検討する。
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