研究概要 |
本年度は腫瘍の存在する間質に、放射線照射が行なわれた場合、腫瘍よりの自然転移が飾修されるか否かについて検討した。 実験方法としては、腫瘍移植前日に腫瘍移植部位に30Gyの前照射を行なった群と、腫瘍が5mmに発育した後、30Gyの放射線治療を行なった2通りの条件を用いた。移植腫瘍はC_3Hマウスに自然発生した線維肉腫N-FSaを用いた。腫瘍サイズと転移の発生の関係を明確にするため、腫瘍が目的のサイズに達したところで、腫瘍を移植した右下肢を麻酔下に切断し、右下肢切断16日後にマウスを殺して肺を摘出し、肺表面に存在する転移結節数を肉眼的に算定し、転移結節数と転移を有するマウスの頻度により効果を判定した。 正常組織に移植した無治療腫瘍からの転移は、腫瘍サイズが10mmを超えると自然転移が発生し、腫瘍サイズの増大とともに、転移を有する頻度と1匹あたりの転移結節数が増加した。一方、前照射部位に移植した腫瘍や、放射線治療を行なった腫瘍よりの転移は、腫瘍サイズが10mm以下でも出現した。照射部位で発育する腫瘍は、非照射部位で発育する腫瘍に比べて、腫瘍の増殖が遷延するため、同一サイズに達するまでの期間が長くなり、小さな腫瘍でも転移を発生したものと考えられる。 腫瘍が5mmに達した後、あるいは放射線治療後にOK-432,2.5KEを週2回、腫瘍周囲皮下に投与しておくと、転移は頻度・結節数ともに減少し自然転移を抑制することが確認された。しかし、腫瘍サイズが12mm以上になってから、OK-432投与を開始しても転移を減少させることはできなかった。すなわち、免疫賦活剤は転移発生前に投与すると有効であったが、転移発生後に投与しても効果を期待できなかった。
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