研究概要 |
アルツハイマー型老年痴呆18例・アルツハイマー病20例に、Xe-133吸入法を行いrCBFの異常から下位分類を行った。検査後、治療としてフィゾスチグミン10-15mg/dayを2週間経口投与し、rCBF・脳波パワー値・髄液中アセチルコリンエステレース(Ache)値・WAIS得点の変動を検討した。rCBF分布からみた下位群として、a)両側側頭葉低下群、b)左側頭葉低下群、c)両側前頭部・側頭頭頂部低下群、d)血流正常群の4群に分類されることが判明した。治療前に行ったWAISや神経心理学検査では、a群には失認失行が顕著でWAIS検査でも動作性の低下が目立つ例とそれほどでない例とが含まれ、前者は初老期発症の後者は老年期発症の症例が多く含まれていることが解った。b群では、痴呆の高度の症例が多く、c群では失認失行などは顕著ではないが、人格変化や多幸的状態がみられた。d群では、失認失行は目立たず、記銘力障害のみを症状とする、痴呆の程度の軽い症例が多く含まれていた。治療前に行った髄液中神経伝達物失測定結果では、a群・c群に有意にAche活性の低下をみる症例が含まれ、d群には有意にセロトニンの代謝産物である5-HIAA値の低下をみる症例が含まれていた。フィゾスチグミン治療後の結果、いずれの群においても、失認失行などの神経心理学的症状やWAIS得点に改善をみた症例はなかった。しかし、a,b,c群においては各群で治療前にみられていたrCBF低下が改善しており、約10-15%の血流量の増加が得られていた。また、脳波パワー値の変化としては、a,d群においてα波の頻度の上昇がみられており、総パワー値としての改善が得られていた。 ラット大脳皮質イノシトール燐脂質(PI)代謝の加齢による影響を、7,13,22ヵ月齢のラットにおいて検討した。カルバコール刺激後のPI代謝は、7M:330%,22M:250%と低下傾向を示すも有意な変化ではなかった。ノルアドレナリン刺激後の結果も、同様の傾向が見られた。
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