研究課題/領域番号 |
63570500
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
十束 支朗 山形大学, 医学部付属病院 精神神経医学講座, 教授 (80009133)
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研究分担者 |
川勝 忍 山形大学, 医学部付属病院 精神神経科, 助手 (00211178)
森信 滋 山形大学, 医学部付属病院 精神神経医学講座, 教授 (30191042)
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キーワード | アルツハイマ-型痴呆 / フィゾスチグミン / 脳血流量 / 5-HIAA濃度 / イノシト-ル燐酸代謝 / HVA濃度 / 脳波パワ-値 / アセチルコリンエステレ-ス活性 |
研究概要 |
昨年度報告書に記載した、アルツハイマ-型痴呆の脳血流分布パタ-ンに従って分類した10症例に対して、アセチルコリンエステレ-ス阻害薬である、フィゾスチグミン経口投与による、臨床症状及び脳血流検査・脳波パワ-分析の追跡調査を行った。痴呆症状の臨床評価には、長谷川式痴呆スケ-ル・GBSスケ-ル・三宅式記銘力検査を行った。症例の内訳は、平均60.8才、中等症4例(平均長谷川得点15.3点)、重症6例(5点)であり、脳血流分類ではI型8例・II型1例・III型1例である。フィゾスチグミン投与量は、10-15mg/dayであり、14日投与後に再検査を行った。治療結果を、以下に示す。長谷川得点では18点(中等症)・5.5点(重症)と有意な改善は得らず、他の検査でも同様の結果であった。脳波パワ-分析では、有意な改善は得られなかった。脳血流検査では、8例で両側前頭部及び側頭部に20-30%の増加をみており、軽度改善の傾向を得た。軽度の脳血流改善のみられた平均大脳半球血流量にも同様に軽度の改善が得られたが、全体としては統計的に有意ではなかった。治療前の脳血流から行った分類と治療後の血流改善の程度との間には、特に有意な関連はみられなかった。今回の臨床結果を総合すると、フィゾスチグミン投与にて軽度の脳血流改善は得られたものの、痴呆評価尺度や脳波検査では改善が得られず、アセチルコリン系以外の神経系への補充療法が更に必要と思われた。 老化ラット(26-27カ月齢)における後シナプス性ムスカリン(M)の受容体を介したイノシト-ル燐酸代謝は、前年度に報告した若年齢ラットに比して軽度の低下傾向を示していた。この結果は、正常老化では病的老化と異なり、後シナプス部M受容体の障害は軽度であり、アセチルコリン補充療法であるPZやM受容体アゴニスト投与などの治療が有効であることを示唆するものと思われた。
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