研究概要 |
アルデヒド脱水素酵素(ALDH)は4種のアイソザイムの他に新たに5番目のアイソザイム(ALDH-V)には活性をもつものと不活性のものとに区分される多型が存在することをすでに我々は報告したが、このアイソザイムのアルコール代謝における役割及びアルコール依存症との遺伝疫学的検討を行なうために次の観点より研究を行なった。ALDH-Vを精製し、特異的抗血清を作りアイソザイムの免疫学的性状を研究する。さらにアルデヒド代謝能とALDH-V多型との相関を調べることにより、アルコール飲酒様態を知る。アルコール依存症患者におけるALDH-V型の表現型分布を検索しその疫学的相関を調べる。これらについて研究した結果、次の点に関し新しい知見が得られた。 1)ALDH-Vは分子量48,000のサブユニットからなるテトラマー酵素であり、等電点を異にするAおよびBの2種類からなり、Aには活性をもつA_1と不活性型のA_0が多型として存在し、Bには活性の弱いB_1とB_2が多型として存在しこれらが組み合わさり6種類の表現型が同定された。 2)家族試料を用いた検索によりA,Bはそれぞれ独立した遺伝子座位からなり、各々の座位に対立遺伝子A_1およびA_0、B_1およびB_2が存在するものと考えられた。 3)サブユニットA_1をもつ個体のアセトアルデヒド代謝能はA_0の表現型個体に比べて高い値を示したことは、A_0個体のアルデヒドの代謝が遅いことを示唆するものである。 4)アルコール依存症患者には健康な集団に比べA_1をもつ個体が有意に多く検出された。 今後は、作成した抗ALDH-V血清を用いて唾液より多量検体をスクリーニングする方法を確立する予定である。
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