研究概要 |
発作間歇期におけるElマウスの大脳半球、間脳一視床、橋一延髄、小脳などの4部位よりポリゾームを分離し、RNAを抽出した。このRNAをOlige(dT)cellulose columnを用いて、ポリ(A)^+mRNA画分を調製した。これら4部位より調製したmRNA画分をポリアクリルアミド・ゲル電気泳動で分析し、いずれの部位からのmRNA画分も、17Sにピークを持つ幅広いRNAのパターンを示した。このmRNA画分を〔^<35>S〕ーメチオニンを含むウサギ網状赤血球ライセートの系に加え、インキュベートした。その後反応混液を二次元電気泳動で分析し、フルオログラフィーで翻訳蛋白質を調べた。その結果、20種以上の蛋白質が翻訳された。そのうち主なものは、Actin,Tublin α_1,α_2、βおよびprotain e,q,s,v,5,p,k,iと名付けられているものであったが、上記4部位の間で翻訳蛋白質に大差は見当らなかった。ただ、分子量約24Kのprotein Pだけが、他部位に比べて、小脳での翻訳蛋白質の増加を惹き起した。この蛋白は、発作非感受性のddYマウス小脳と比べると、僅かに低値を示したが、その差は有意ではなかった。次にElマウスの発作中および発作後における全脳のmRNAについて、翻訳蛋白質を間歇期と比較した。強直発作期において24Kのprotein Pのラベルは変化しなかったが、発作直後にはかなりの減少を示した。しかし、発作後30分では間歇期のレベルまで回復した。このことは、24Kのprotein Pの合成に関与するmRNA分子種が発作により著しく減少したことを意味する。こうした減少傾向は、他の蛋白分子種では認められないので、protein Pが発作感受性に相関している可能性が考えられる。今後、小脳に特異的なprotein PをcodeするmRNAのゲノムをクローニングすることにより発作感受性と遺伝形質との関連が明らかになるものを期待される。
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