研究概要 |
覚醒剤中毒患者について入院時の尿を採取しβーphenylethylamine(PEA),phenylacetic acid(PAA),methamphetamine(MAP)含量をガスクロマト質量分析計を用いて測定した。PEA含量は8.7±10.5ug/g creatinine,PAA含量は75.3±16.5mg/g creatinine,MAP含量は0.2ugー30mg/g creatinineであった。健常正常者のPEA含量は22.4±11.2ug/g creatinineであり患者群のPEA含量は有意に低値であった。一方PAA含量は対照群で63.9±14.4mg/g creatinineで患者群で高い傾向を認めた。入院後10日間蓄尿が出来た一例ではPEA排泄量はMAP排泄量と相関して日を追って減少し7日間で最低値を示した。しかし患者群全体ではPEAとMAP排泄量に何等相関は認められなかった。一方PAA排泄量とMAP排泄量の間には有意な正の相関が認められた(r=0.81,P<0.01)。 次にラットを代謝ケ-ジで7日間飼育し蓄尿を行った。3日目にMAPを2mg/kg腹腔内投与しPEA及びPAA排泄の変動を観察した。その結果MAP投与後24時間のPEA排泄は16%の一過性の減少が認められ次の24時間で基礎排泄量に復した。一方PAA排泄量はMAP投与により続く24時間で34%の増加が認められた。尿中に排泄されるPAAの由来についてはPhenylalanineの脱アミノ化が主な経路とされているがPEA投与によりPAA排泄は用量依存性に増加することが報告されている。またMAP投与によりラット脳内のPEA産生及び分解が促進されると報告されている。これらの報告及び今回の臨床的、実験的研究からMAPの投与によりPEAの産生が増加し同時により以上にPEAの分解が促進するためPEA排泄の減少とPAA排泄の増加を来したものと考えられる。
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