研究概要 |
ヒト視床下部房室核の小型神経細胞における、corticitrop in放出刺激ホルモン (CRH) とarginine vasopressin (A VP) の共存を証明した。 [方法] 剖検で得られた10%ホルマリン固定ヒト視床下部組織をパラフィン包 埋し、厚さ2.5μmの連続切片標本を作製し、これにPAP法による免疫染色を施 行した。一次抗体として、AVPの側鎖認識抗体とAVPの環状構造認識抗体及び抗 human,rat CRH抗体を用いた。パラフィン包埋視床下部組織の連続する 3枚の切片のうち中央の切片を抗CRH抗体で、その前後の切片をAVP側鎖認識抗 体と環状構造認識抗体でそれぞれ免疫染色を行った。 [結果] 抗CRH抗体では、視床下部房室核の小型神経細胞に免疫陽性反応が認 められ、視束上核には免疫陽性反応は認められなかった。2種の抗AVP抗体では、 両者供に、房室核の大型及び小型神経細胞と視束上核に免疫陽性反応が認められた。 これらの3枚の連続切片で免疫陽性反応を示した視床下部房室核の小型神経細胞につ いて、細胞の同一性を検討した結果、同一の小型神経細胞に抗CRH抗体及び2種の 抗AVP抗体で免疫陽性反応が認められた。 [考察] CRH陽性細胞に、AVPに特徴的な化学構造である側鎖構造と環状構 造を有する物質が存在することより、CRHとAVPはヒト視床下部において、同一 細胞に共存すると考えることができる。以上より、CRHとAVPはヒトにおいて、 視床下部房室核の同一の小型神経細胞より分泌され、下垂体でのACTH分泌刺激に 関与していることが考えられ、一次性ないしは、二次性の副腎皮質機能低下症に認め られる低Na血症の成因に、CRHと共存するAVPが重要な役割をはたしている可 能性が示唆された。
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