研究概要 |
下垂体からのACTH分泌を刺激する視床下部ホルモンとして、corticotropin放射刺激ホルモン(CRH)とarginine vasopressin(AVP)が知られており、我々は、免疫組織化学的に、ヒト視床下部室傍核の小型神経細胞にCRHとAVPが共存することを明らかにした。内因性AVPのACTH分泌に対する影響を検討するために、正常男子8例において、CRH(100μg静注)試験、CRH(3.33μg/分、90分間)持続投与試験、視床下部を介してACTH分泌をもたらすインスリン(0.1単位/kg、静注)負荷試験(ITT)、さらに、水負荷(WL)、デキサメサゾン(Dx)2mgとWL前処理後のITTを行い、血漿ACTH、FとAVP濃の経時的測定を行った。 〔結果〕同一正常者8例でのCRH試験、ITTの血漿ACTHの最大反応は各々、53.4±10.0,135.7±36.3pg/mlであり、後者が有意に大きかった。後者は、CRH大量投与となる持続投与郡の最大反応大きかったが、WLITT群とは差がなかった。血漿AVPは、ITTにおいて、前1.49±0.51pg/mlより、30〜45分に一過性の有意の上昇を認めた。WLITT群では,WL開始後30〜45分の0.89±0.21pg/mlより、血漿浸透圧の低下の得られているITT30〜45分に4.12±1.30pg/mlの有意の上昇を認めた。Dx2mgo前処置後のWLITT群で十分な低血糖の得られた例においては、ACTH,AVP,Fの反応を認めた。 〔考察〕ITTによるAVP分泌反応に対する,WL後の血漿浸透圧の低下にすよ抑制は認められず,ITT時には、AVPの反応は、ACTHの反応と同様に、血漿浸透圧の低下の影響を受けないことが判明した。Dx投与後のWLITTでは十分な低血糖が得られにくく、再に系統が必要である。ITTによるAVPの分泌は、血漿浸透圧の低下による抑制をうけないで行われられると考えることができるが、このAVP分泌が室傍核の小型神経の分泌を反映しているかどうかは今後の検討が必要である。
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