研究概要 |
1.副腎摘除ラットの視床下部室傍核のAVPとCRH。室傍核小型細胞のAVPとCRHの免疫染色性は、副腎摘除にて増大したが、これはデキサメサゾン投与にて抑制された。アルドステロン投与・脱水では変化をうけなかった。従って室傍核小型細胞のAVP産生は、副腎不全時増大していると考えられ、これはミネラルコルチコイド欠乏や脱水のためではなく、グルココルチコイド欠乏のためと考えられた。 2.ヒト剖検例における視床下部室傍核でのAVPとCRHの共存とCRH神経線維の走行。室傍核小型細胞でのAVPとCRHの共存がみられた。CRH陽性線維は、室傍核より側方に弧を描く様に下行し、下垂体茎の方向に向っていた。 3.ヒトおよびラット視床下部における新しい神経ペプチド。Calcitonin gene related peptide(CGRP),brain natriuretic peptide,melanin corcentrating hormone(MCH),cerebellinの4種ペプチドを検討したが、ラジオイムノアッセイにて高濃度の存在が認められた。免疫染色で、ヒト視床下部においてCGRPは室傍核・視索上核に、MCHは視床下部後部の乳頭体周囲に多数の陽性細胞がみられた。 4.インスリン低血糖時の血漿AVP・ACTHの反応とCRH試験との比較。インスリン低血糖時のACTHの増加は、CRH試験時のそれと比較し約2.6倍であった。インスリン低血糖時には血漿AVPの増加がみられ、この増加は同時に水負荷を行っても十分な抑制はみられなかった。従ってインスリン低血糖時のAVP分泌が下垂体・副腎機能と密接な関係が有していると考えられた。 上記の4研究の結果から、視床下部室傍核小細胞にCRHとともに存在するAVPが、副腎不全時の低Na血症発生に重要であると考えれらた。CGRP等の神経ペプチドの関与はさらに検討が必要と思われた。
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