『序』プリン体のde novo生合成経路に特異的な初段階を触媒する酵素、amidophosphoribosyltransferase(ATase)遺伝子調節機序を検討した。 『方法』大腸菌由来のATase遺伝子とMMTV(mouse mammary tumor virus)の糖質コルチコイド依存性のプロモ-タ-との組換えDNAを、ATase酵素活性のみを欠損する哺乳動物培養細胞(CHO ade-A)に導入し、酵素蛋白の発現量を人為的に調節し、プリン体のde novo生合成経路に与える影響の分析を試みた。初代培養肝細胞においてインスリン投与がプリン体のde novo生合成経路に与える影響を分析した。ATaseをラット肝臓より精製し、その非変性分子量とサブユニット分子量を決定した。 『結果』組換えDNAの導入株に対する遺伝子導入と3.8kbのmRNAへの転写をサザンとノザン分析により確認した。野生株と比較して、遺伝子導入9株の細胞抽出液中のATase活性は、グルココルチコイド非存在下における4.4%から、存在下において18.3%に増加した。ウエトタン分析より、57kDの蛋白をコ-ドする大腸菌のATase遺伝子に対し、大腸菌の抽出液には57kDと70kDの、導入株においては72kDの蛋白のみがグルココルチコイド依存性に発現することを認めた。しかし、DNAおよび、プリン体のde novo生合成速度は増加せず、プリン体非依存性生育能は獲得されなかった。初代培養肝細胞に対するインスリン投与によりATaseは、選択的に誘導された。ラット肝の精製ATaseの分子量は240kDで、62kDと57kDの2種類のサブユニットからなるヘテロテトラマ-で存在した。 『結論・考察』大腸菌ATaseの人工発現は、発現される酵素活性が少なく、ATase蛋白が細胞内で二つの分子量形態で存在する等のため、細胞内機能が発揮されなかったと考えられる。哺乳動物のATaseは増殖刺激に対して選択的に誘導され、ヘテロテトラマ-として存在する。今後、哺乳動物のATaseの遺伝子をクロ-ニングし、代謝調節機序を検討する。
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