研究概要 |
疫学的にはHDLが動脈硬化の防御作用を有する可能性が示されて久しいが、生体内でのHDL代謝の詳細やその意義は必ずしも明らかではない。我々は従来の常識とは逆にHDLコレステロールが正常の3倍以上を示しながら狭心症、心筋梗塞、若年性の角膜輪を有する特異な症例を見いだした。これらは肝性リパーゼ(HーTGL)の活性低下を示していた。最近にになりこれに加えてコレステロールエステル転送蛋白(CETP)活性欠損を示す高HDL血症の3家系を世界で初めて発見した。本研究では、これらの従来までに報告のない家族性HDL代謝異常症を基盤としてHDLの動脈硬化防御機構の解明と、これに関するHーTGLやCETPの役割をリポ蛋白代謝の面から検討し、CETP活性欠損症については遺伝子の検討も行った。Phenyl-Sepharose,CM-Sepharoseなどを用いて正常者血清から精製したCETPを、同活性欠損症患者のリポ蛋白とインキュベートすると、HDL中のコルステロールはVLDL、LDLへ転送され、一方トリグリセリドはこの逆方向に転送され、これらのリポ蛋白組成は正常に近づいたが、完全には正常化せず、このリポ蛋白間転送に関しては細胞ないし他の因子のinteractionも関与していると考えられた。さらにHDL代謝を検討するためにリポ蛋白の合成や代謝において重要な働きを果たす肝臓の役割を培養肝細胞(Mahlavu)を用いて検討した。ライソゾーム酵素阻害薬剤を使ってHDLの代謝をLDLと比較検討したところ、共に肝細胞に取り込まれるがLDLはライソゾームで代謝されるのに対しHDLではここでは代謝されず際だった差異をしめした。また、CETPのcDNAを用いて活性欠損を示す症例の遺伝子をRFLPにて検討したが、大きなdeleかon,insertionなどの異常は認めなかった。
|