研究概要 |
増殖中の肝におけるEGFの役割、EGFRの動態を調べるために、胎仔、新生仔、再生中の肝のEGFRの性状を検討した。増殖中の肝の^<125>I-EGF結合は対照動物と同様に二相性の結合を示し、その結合親和性はほとんど同じであったが、結合能は著しく低下していた。^<32>P-ATPによるEGFRの自己燐酸化能は胎仔,、新生仔肝では外部より添加したEGFに対し応答性はほとんど見られず、再生肝でもEGF依存性は低かった。合成基質GATを用いて測定したチロヂン燐酸化酵素活性は胎仔、新生仔肝では成熟動物肝のそれよりも高い活性を示したが、この場合にも外部より添加したEGFに対しては応答性を示さなかった。EGFRの細胞外領域の大部分をコ-ドするcDNAをプロ-グとしてこれらの動物肝より分離したpolyA^+RNAについてEGFRmRNA発現量を測定した。いずれの肝でも10、6、3kdのmRNAが発現していたが、それらの量は新生仔肝では極めて低く、再生肝でも有意に低下していた。以上の結果より胎仔、新生仔肝の増殖にはEGFの関与は少ないが、成熟動物の肝の増殖にはEGFが役割を演じているものと結論した。しかし胎仔、新生仔肝に見られたEGF非依存性の高いチロヂンキナ-ゼ活性は何に由来するものなのか、発生の早期の肝増殖に関与する因子はなになのか、またEGFに対する応答性は発育のいかなる段階で付与されるかなどはEGFの核内結合部位の分子性状とその生理的意義と共に解明されなければならない今後の課題であると思われる。
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