1.ラット肝核分画中にEGFに対する高親和性結合部位が見出された。この結合部位は高親和性(kd=0.25nM)および低親和性(kd=3.0nM)を示す2構成成分より成り、^<32>p+γ-ATPと保温した時に自己燐酸化能を全く示さなかったことより膜結合部位とは全く異なったものと思われる。肝部分切除後の再生時には膜、核分画中のEGF結合能は有意に低下したが核分画中の鼻合部位数は再生の早い時期に回復を示した。この核結合部位の分子性状および生理的意義の解明のために種々の試みを行ったがいずれも未だに成功していない。2.増殖中の肝におけるEGFの役割、EGFレセプタ-動態を調べるために胎仔、新胎仔、再生中の肝のEGFレセプタ-の性状を検討した。そのEGFに対する結合親和性は総ての実験群でほとんど同じであったが結合能には大きな差が見られ、増殖中の肝では有意に低下していたEGFレセプタ-の自己燐酸化能は胎仔、新生仔肝では外部より添加したEGFに対し応答性はほとんど見られず、再生肝でもEGF依存性は低かった。合成基質GATを用いて測定したチロヂンキナ-ゼ活性は胎仔、新生仔では成熟動物肝よりも高い活性を示したが、この場合にも外部よりのEGFに対して応答性を示さなかった。3.EGFレセプタ-の細胞外領域の大部分をコ-ドするCDNAをプロ-ブとしてこれら動物肝より分離したpolyA^+RNAについてEGFレセプタ-mRNAの発現量を測定した。いずれの肝でも10、6、3kdのmRNAが発現していたが、それらの発現量は新生仔肝では極めて低く、再生肝でも有意に低下していた。以上の結果より胎仔、新生仔肝の増殖にはEGFの関与は少ないが成熟動物の肝の増殖にはEGFが役割を演じているものと推論した。
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