前年度に作成した抗体で構築したradioimmunoassay系を用いてヒトおよびラットでの組織分布、ヒト体液中での存否について検討した。ラット組織では脳下垂体、膵臓、副腎等内分泌臓器で比較的高値を認めた。ヒト消化管外科手術時の摘出標本での検討では小腸各部位、大腸で免疫活性を認めたが部位別で著しい差異はなかった。ヒト体液中での検討では脳腫瘍患者、脳血管障害患者(蜘蛛膜下出血、脳出血、硬膜下出血および脳硬塞)、正常者の脳脊髄液中に免疫活性を認めた。血漿での検討も行ったが正常者、糖尿病患者、甲状腺機能異常症患者、肝疾患患者等では免疫活性を認めなかった。慢性腎不全患者血漿では免疫活性を認めadipokinetic hormone(AKH)の血漿よりの除去に腎が重要な役割を果たしていると考えられた。逆相高速液体クロマトグラフィ-、ゲルクロマトグラフィ-によるこれら免疫活性の検討では脳脊髄液および腎不全患者血漿の免疫活性は単峰性でAKHとほぼ同一と考えられたが組織中の免疫活性は多峰性を示しAKHより大分子型の占める割合が多いと考えられた。又、脳下垂体、膵臓、副腎でのAKHの作用について検討を行なった。ラット摘出膵灌流標本を用いて10mMアルギニンおよび18.5mMトルブタマイドを刺激物質としてインスリン、グルカゴン分泌の変化を検討した。両刺激下でAKH10^<-10>Mから10^<-6>Mの濃度で用量依存性に分泌抑制作用を認めた。雑種成犬を用いたin vitroの検討ではAKH50pmol/kg/minの投与でACTHの有意の変動を認めた。5pmol/kg/min以下の投与での有意の血中ホルモンの変動は認められず無脊髄動物に認められる脂質動員作用は認められなかった。レセプタ-の検討は超遠心法によって得られる粗製膜分画を用い、脳、肝、腎組織で特異的結合が存在すると考えられたが安定した結果が得られずアッセイ法の変更も必要と考えられた。
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