研究概要 |
〈目的〉我々は1昨年度から成長障害、特に所謂正常低身長者の成長障害に関してその病態及び治療に関する検討を行って来た。その結果正常低身長者の中には1日GH分泌量の少ない者が約1/3程度に存在することを明らかにした。又この1日GH分泌量の低下には視床下部のGH分泌抑制ホルモンであるソマトスタチンの分泌増加ではなく、むしろGH分泌刺激ホルモン(GRF)の分泌低下が関与しているこを示唆する結果を得た。このような症例の治療には理論的にはGRFを投与することが適切と考えられるが、現在GRFは治療薬として入手できないので今回はhGH治療を行いその成長促進作用を検討した。〈方法及び結果〉通常のGH分泌刺激試験でGHの分泌増加反応のみられた低身長者62名(7-16才)を対象とし20分おきに採血して1日GH分泌量の検討を行った。1日血中GH平均値は4.95±2.55ng/mlで血中IGF-I濃度及び尿中GH排泄量と正の相関関係を認めた。このうち30名にhGH治療を行った。投与量は体重kgあたり毎日0.1単位を皮下注射にて6ヶ月間投与し、その後6ヶ月間休薬し、その後再び6ヶ月間の治療を行った。これら症例の未治療時、治療時、休薬時、再投与時の身長の伸びはそれぞれ4.3±0.9,7.3±1.9,4.9±2.0,8.5±2.0cm/年間でhGH治療効果を認めた。これら正常低身長者へのhGH治療効果の判定基準は現在ないので暫定的に基準を定めて検討したところ約74%の症例に治療効果を認めた。治療効果の認められた例と認められなかった例につき治療前の各種因子を検討し、治療効果を予測しうる因子があるかどうか調べたが、暦年令、骨年令、血中IGF-I濃度、インスリン低血糖試験時のGHの頂値、1日GH分泌量等との関係は認められなかった。以上の結果は低身長患者への短期hGH治療効果を示すものであるが、長期間連続して治療した場合、最終身長に対しどれだけこうかがあるかは今後の検討課題である。
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