1.インスリン自己免疫症候群の患者血中に検出される異常インスリン分子種のcharacterization:以前報告した成績(Wasadaら、JCEM66:153-58、1988)は某民間研究機関のHPLC装置を借用して遂行したが、今回、新機種のHPLC装置が設備されたので、現在、基礎的検討を行っており、新たな知見はまだ得られていない。目的とするインスリン分子種は血中濃度が極めて微量であることから、症例毎の検索は困難であり、数例のプール分画について検討する予定である。 2.モノクローナル抗体の性状を示すインスリン自己免疫抗体の検討:今回、極めて希なインスリン自己免疫症候群のインスリン抗体について詳細な検討を行った。本抗体はIgG、入タイプ(免疫沈澱法、免疫電気泳動法)で、Scatchard解析ではlow affinity、high capacityの直線性を示した。また^<125>I-insulin-Antibady複合体はmoleculay sieve HPLC法で、ほぼ単一ピークの溶出パターンを示した。本例は良性M蛋白血症を合併しており、本抗体はM蛋白由来であることが強く示唆された。モノクローナル抗体によるインスリン自己免疫症候群として本例は世界で第2例目の症例である。 3.インスリン自己免疫症候群(本邦報告例)26例のHLA抗原の推計学的検討を行った。本症候群に対する罹患感受性遺伝子との関連が推定されるHLA抗原として、A_<11>(10)/(23)=43.5%(r.r.3.4)、Bw_<62>(20)/(25)=80.0%(15.4)、Cw_4 17/24=70.8%(21.3)、DR_4 14/16=87.5%(10.6)が有意であった。これらの一部は本邦1型糖尿病患者のHLAタイプと共通するものであり、発症機序において類似の自己免疫症候群免疫機序作動している可能性を強く示唆している。
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