研究概要 |
1.インスリン自己免疫症候群の患者血中に検出される異常インスリン:患者血清を酸性下にBioo-GelP-30でゲル瀘過し、遊離インスリン免疫活性ピ-クを逆相HPLCにて分析した。主要ピ-クはヒトインスリンであり、内因性インスリンに由来する。一方、疎水性を示す小ピ-クが再現性を持って検出されるが、このピ-クはインスリン自己免疫症候群に特異的ではないこと、またCPR活性を示さず、プロインスリンあるいはその中間代謝体とも異なると想定される。一般にこの成分は極めて微量であるため、詳細な検討が至難であるが、最近このピ-クがヒトインスリンピ-クを上まわる一症例に遭遇した。今後、この物質の生物活性、さらに可能なら一次構造の解析を進めたい。 2.SH(sulfhydryl)基化合物の影響:本症候群の発症誘因として注目されるSH基薬剤のインスリンに対する影響を検討した。8.8×10^<-3>Mのmethimazoleとヒトインスリンを孵置した後、HPLCで解析すると、ヒトインスリンの溶出特性には全く変化を認めなかった。また、SH化合物(1mM)中D-penicillamneを除いて、methimazole,Tiopronin,captoprilは^<125>I-インスリンの受容体結合能に障害を与えなかった。一方治療レベルの上記SH化合物はインスリン受容体の側に対しても明らかな影響を示さなかった。したがって従来推論された如く、SH基薬剤によりインスリン構造が変化を受ける結果、抗体が産生されるとする仮設は否定的である。 3.本症候群のHLAタイプ:全国調査を行い、HLA抗原タイプが決定された26例についてみると、A_<11>,B_<15>(Bw_<62>),Cw_4,DR4が対照に非べ有意に高頻度であった。SH薬剤誘発例と非誘発例群間ではHLAタイプに差はみられなかった。したがって、本症候群にはある特定の疾患感受性素因の関与することが示唆された。
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