高カロリー摂食後の、肩甲骨間褐色脂肪組織(BAT)温の変化とエネルギー消費量との相関関係についての研究。 1.動物実験:SpragueーDawley雌ラット(200g)の肩甲放間BATへ、微細針型温度センサーを挿入固定一週後、24時間絶食にて、基礎値を得るため、2時間にわたり、肩甲骨間BAT温と、resting metabolic rate(RMR)を連続的に測定。その後、高カロリー(100Kcal:糖質53%、脂肪34%、蛋白16%)流動食をチューブにて強制摂食させ、BAT温上昇反応とRMRとを連続5時間にわたり測定。結果は、100Kcal摂食後、BAT温は30〜60分後に最初のピークが現われ、その後一度下降後、食後3時間目より再度上昇し、食後5時間まで高値を維持した。一方、連続測定したRMRも、食後30分より60分にかけ最初のピークがみられ、その後下降し、食後3時間目より再上昇し、食後5時間まで続くBATでの変化とほぼ正相関した成績が得られた。このことより、BATは、適応的食事待応性熱産生に対し、重要な役割を果たしているだけではなく、従来、肝臓が重要な役割を果たしていると考えられていた。食後短時間で発現する不可避的食事誘導熱産生にも、重要な役割を演じている可能性が示唆された。 2.ヒトでの研究:成人標準体重ボランティア5例に対し、高カロリー流動食(900kcal:糖質50%、脂肪34%、蛋白16%)負荷を行い、前後5時間にわたり、呼吸代謝測定装置にて、エネルギー消費量を30分毎に測定した。結果は、食後30分〜60分で第一のピークがみられ、その後下降し、2時間後より再度上昇し、ラットでの成績とほぼ同様のデーターを得た。しかし、肩甲骨間BAT相当部のサーモグラフィーでの検討では、食後30分〜60分後に温度上昇はみられたが、その後は下降してしまい、ラットの様に、BAT温とRMR測定間の相関関係はみられなかった。本年は、ボランティア数を増やし、再検討する予定である。
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