1.将来の臨床応用の為には、検体採取が容易であることが要求されるが、その為に、甲状腺ホルモン感受性遺伝子の検討の対象として末梢血リンパ球を選んだ。しかし、リンパ球が甲状腺ホルモンに良好な感受性をもつ組織であるかについては情報がなかった。そこでヒト末梢血リンパ球の甲状腺ホルモン核受容体の存在の確認をまず行った。^<125>I-トリョードサイロニンを用いてScatchard analysisをするとKd=1.01×10^<-9>M、Maximal binding capacity=4.09mol/μgDNAの核受容体があることが証明された。T細胞、B細胞をロゼット形成で分離した後での同様の検討では、両細胞間にKd、Capともに有意な差はなかった。いずれの細胞もトリヨード・サイロニンに対して反応する遺伝子があるものど考えられる。そこで、この甲状腺ホルモン感受性遺伝子同定の為に粘液水腫症患者の治療前及び甲状腺ホルモン補充療法後のリンパ球を採取し、B細胞、T細胞に分離後、凍結保存し、後日同時にpolyA-RNAを抽出した。これを^<35>S-メテオニン入りの無細胞培養系にかけ、その産出蛋白質を二次元電気泳動にかけ、分子量と等電点で分離し、治療前と後での量の変化をAutoradiographyで検討した。4〜5spotで増加がみられ、2〜4spotで減少がみられたが、個人差があり、共通するものをさらに症例を重ねて検討する予定でいる。一方、治療前リンパ球の培養によるトリヨードサイロニン添加急性実験でも同様のpolyA-RNA抽出とその翻訳産物の検討を行ない、増加を示すspotを得た。最も増加の大きいものについて、別に作ったヒトリンパ球CDNAlibralyより、Hybria selectionによりそのcDNAをつりあげ、フローグとして確立する努力を行なう。
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